「兵庫経協」 2025秋号

一般社団法人兵庫県経営者協会 AUTUMN 2025, No.399 H Y O G O EMPLOYERS’ ASSOCIATION

作品のご提供は、当協会の会員である神戸学院大学様の美術部 “鷗風會”さんです。さて、今回の作品は・・・・・秋の森の中、木の葉がカサカサと音を立てながら落ちる季節。クマは冬眠にそなえて、たっぷり食べ物を集めていたんだ。どんぐり、木の実、蜂蜜…だけどどうも寒くなると体があったかいものを欲しがる。そこでクマは大きなお鍋を持ち出して、森の仲間たちに声をかけた。「シチューを作ろうと思うんだ。みんなで材料を持ち寄らないか？」リスは甘い栗を、ウサギはにんじんを、キツネはきのこを、リスは香りのいいハーブを。最後にクマは自分が大切にとっておいた蜂蜜を、スプーン一杯だけ鍋に落とした。ぐつぐつ煮込むと、森いっぱいにやさしい香りが広がる。みんなで囲んで食べるシチューは、体も心もぽかぽかになって、冬の寒さなんて忘れてしまうくらい。「来年もまた、秋になったらみんなで作ろうね」クマは満腹のお腹を抱えて、にっこり笑った。やさしい秋の香りが漂う、ぬくもりいっぱいの1枚です。表紙の作品・インターンシップ推進事業‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1 ・労働政策ニュース‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2-3 ・理事会・常任幹事会・講演会‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4-5 ・Look at the 企業「株式会社関西コーヒー」‥ ‥‥‥‥‥‥‥ 6-7 ・労働問題Q＆A‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8-9 ・経協レポート‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10-13 ・雇用確保の要請‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14 ・セミナー予告‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 ・歯の健康シリーズよく噛む事が健口（けんこう）の秘訣‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16

ビジネスマナーの基礎習得と、楽しみながら行える自己分析を通じて、インターンシップや就業体験、そして今後の就職活動に向けての心構えを身につけるための研修を開催しました。参加学生は「学生生活やアルバイトでは、なんとなく意識していても、社会で通用するきちんとしたビジネスマナーを身に着けている自信はない・・・」と、はじめは緊張していた様子もありましたが、明るくおしゃれなカフェ会場で学生同士の会話も弾み、ロールプレイングやグループワークなどを通して多くのことを学びました。【日時】2025年6月29日（日）13：30～16：10 【講師】株式会社SORA 角本紗緒理氏【会場】120 WORKPLACE KOBE 7F（対面開催）【参加者】＜学生＞15名大阪芸術大学／大阪公立大学／関西国際大学／関西学院大学／神戸市外国語大学／産業技術短期大学／東亜経理専門学校／兵庫県立大学／武庫川女子大学またセミナーの中で、自分の性格特徴、強み、弱み、成長課題などがわかる、株式会社SORAオリジナルの『SP（サブ・パーソナリティ）トランプ』を利用した「自己理解のワーク」も行いました。就職活動の中で問われる長所・短所を確認できることはもちろん、その特徴を活かした対人関係の構築の仕方などもアドバイスをいただき、受講学生からは「客観的に自分の特性を知ることができ面白い！」といった声が聞かれました。今回のビジネスマナーセミナーで得た知識と経験が参加学生の自信につながり、今後参加予定のインターンシップ・就業体験、そして就職活動や社会人生活の中で活かしていただけることを願っています。当事業にご賛同いただき、お忙しい中ご協力いただきました企業の皆様に、心より御礼申し上げます。 2025年度実施状況「2025年度ビジネスマナーセミナー」を開催しました「大学低学年向けひょうご企業見聞録事業」について兵庫県と連携し、2023年度から開始いたしました「大学低学年向けひょうご企業見聞録事業」は、学生の適切な職業選択に向けて、学生生活の早い時期から県内企業を知る機会を提供することで、企業の認知度を向上させるとともに、「自己理解」と「職業理解」につながるキャリア形成支援を図ることを目的としています。今年度は、園田学園大学経営学部ビジネス学科の授業内で行われる実習にご協力いただける企業を、（一社）兵庫県経営者協会よりご紹介いたしました。兵庫県インターンシップ＆キャリアシステムにご登録いただいている企業を対象に公募を行い、学内での会社説明会へのご参加、及び5日間の実習お受入れをいただくことができました。インターンシップ推進事業 ※2025年8月末時点〈企業〉【登録】396社：【募集】70社 → 学生エントリーと企業選考を経て【実施決定】22社〈学校〉【登録】263校：インターンシップ等の実習に参加が決定した学生の【所属校】76校〈学生〉【登録】755名：【エントリー】延べ400名 → 企業選考を経て【参加決定】延べ265名（ビジネスマナーセミナーの様子）（SPトランプワークの様子） ■園田学園大学大学低学年向けひょうご企業見聞録事業ご協力企業（五十音順・敬称略） Earthink㈱、㈱ウエルネス、（社福）博由社、モラブ阪神工業㈱、㈱ヤマシタワークス 1 兵庫経協2025年秋号

政府目標の改訂と背景政府は昨年、「2030年代半ばまでに全国平均の最低賃金を1,500円とする」という目標を、より早期に達成する方針へと改めました。これは、石破首相が総裁選で掲げた「2020年代に全国平均1,500円を実現する」という公約を反映したものです。この公約に基づき、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」および「経済財政運営と改革の基本方針2025」が改訂され、「2020年代に全国平均1,500円」が明記されました。中央最低賃金審議会の目安額とその根拠中央最低賃金審議会（目安審議会）は、政府目標に対応する形で、7％台の引き上げを示すことが予想されていました。しかし、実際には6％増（63円）の目安額が提示され、審議会の独立性が改めて示される結果となりました。 ○目安額の根拠について一昨年：消費者物価指数（持家の帰属家賃を除く総合）昨年：消費者物価指数（頻繁に購入する品目）今年：春季労使交渉の賃上げ率や消費者物価指数など、政府目標の7％や6％を直接裏付ける指標や明確な根拠は示されませんでした。結果として、総合的な判断による目安額となりました。兵庫は目安に1円上乗せで決着兵庫県の地方最低賃金審議会専門部会では、5回にわたる審議が行われましたが、労使間で合意には至りませんでした。そのため、昨年同様、公益委員の見解に基づいて採決が行われました。公益委員は以下の点を踏まえ、目安額に1円を上乗せする案を提示しました。労働政策ニュース特集兵庫県最低賃金は1,116円です 64円増額で10月4日より適用、県内3割の労働者の賃金改定が必要です。特定（産業別）最賃は、12月1日より6業種が増額します。 2 兵庫経協2025年秋号

今後の見通しと皆様へのお願い昨年に続き、今年も内閣が交代する見込みです。初年度から目標未達となったことで、「2020年代に全国平均1,500円」の実現は困難な状況ですが、新内閣もこの目標を引き継ぐことが予想されます。今後も政府は、今年以上の最低賃金引き上げを求め、目安審議会より具体的な根拠の乏しい目安額が示されるものと考えられます。各会員企業の皆様におかれましては、今回の最低賃金改定の経緯と趣旨にご理解いただき、今後の賃金および物価の上昇に十分対応できるよう、計画的な準備をお願いいたします。また、最低賃金改定に関して、ご意見や相談事項がございましたら、兵庫県経営者協会までご連絡願います。令和7年度兵庫県最低賃金の改正状況区分 R6年度時間額引上額 R7年度時間額引上率影響率（※）発効日兵庫県最低賃金 1,052円 64円 1,116円 6.08% 30.73% 10/4 （全国加重平均） 1,055円 66円 1,121円 6.26% ― ― 塗料製造業 1,099円 59円 1,158円 5.37% 5.49% 12/1 鉄鋼業 1,116円 64円 1,180円 5.73% 6.19%12/1 はん用機械器具等製造業 1,087円 63円 1,150円 5.80% 9.07%12/1 電子部品等製造業 1,053円 64円 1,117円 6.08% 20.86% 12/1 輸送機械器具製造業 1,126円 62円 1,188円 5.51% 7.33%12/1 計量器等製造業 1,053円 64円 1,117円 6.08% 12.47% 12/1 自動車小売業 963円 ― ― 改正の必要性なしと答申、県最賃を適用繊維工業 800円 ― ― 改正の申出がなかったため、改正せず、県最賃を適用各種商品小売業 797円 ― ― ※影響率とは最低賃金を改正した場合、その改正後の最低賃金を下回る労働者の割合のこと審議会の議事録・資料等は、兵庫労働局HP「兵庫地方最低賃金審議会情報」でご確認いただけます。 https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/chingin_kanairoudou/ saichin_shingikai/info_hyogo_mw_council.html ・賃金上昇を上回る物価上昇が続いていること・全国加重平均に近づける必要性・県内の中小零細事業者の厳しい経営状況への配慮・目安額を上回る改正をした県に対する政府・関係省庁による支援への期待（※ただし、石破首相発言の「目安額を上回る改正をした県への特別な対応」は、現時点では実行されていません）採決の結果、使用者側は反対、公益・労働側は賛成し、目安額プラス1円での引き上げが決定しました。 3 兵庫経協 2025年秋号特定最低賃金

⃝第4回定時理事会第4回定時理事会を、9月19日（金）午後2時より、ザ・マーカススクエア神戸にて開催し、理事8名及び監事 1名にご出席いただき、下記5つの議案が審議され、全ての議案について原案通り可決承認いただきました。・第1号議案「事務所移転に関する検討開始について」・第2号議案「協会職員（直傭者）の賃金改訂について」・第3号議案「決裁規定の一部改定並びに公設委員の推薦について」・第4号議案「常任幹事会の副幹事長候補者の選任について」・第5号議案「役員退任記念品支給規程の制定について」また、報告事項として、下記の2つが事務局より報告されました。・報告事項① 「代表理事及び業務執行理事の職務執行状況報告」・報告事項② 「会員の入退会・変更等報告」 ⃝第1回常任幹事会～公正取引委員会と意見交換を行いました～理事会に引き続いて、午後3時より、ザ・マーカススクエア神戸5階「ミッドタウン」にて第1回常任幹事会を開催し、45名の常任幹事にご出席いただきました。常任幹事会では、本会の幹事長でもある成松会長の開会挨拶に続いて、事務局より常任幹事の役割と今後の常任幹事会の予定を報告し、「委員会、専門部会、研究会が行う事業や活動について意見し、必要な情報を入手することにより、事業全般を活性化する」という常任幹事会の役割について説明されました。また、常任委員会の副幹事長には、業務理事で専務理事の岸敏幸が選任されました。続いて、政労使会議の共同メッセージである「オール兵庫で取り組む」ことについての具体的な取り組みを目的に、県内各地経営者協会など10団体から構成される「兵庫県内経営者協会団体長会議」を今年度内に設置することついて事務局より説明いたしました。（一社）兵庫県経営者協会理事会・常任幹事会・講演会挨拶する成松会長公正取引委員会南所長 4 兵庫経協2025年秋号

最後に、公正取引委員会との懇談会として、同近畿中国四国事務所所長南雅晴様より、「価格転嫁の円滑化に向けた公正取引員委員会の取組み」についてご説明いただいた後、常任幹事の皆様からいただいた質問や意見にご回答いただき、公正取引委員会の価格転嫁に向けた取り組みに係る姿勢や考え方について意見交換をいたしました。 ⃝9月度講演会「中小企業の成長戦略としての障害者雇用～義務的雇用から戦略的雇用へ」講師：株式会社野村総合研究所シニアコンサルタント木島百合香氏コンサルタント竹原佳歩氏常任幹事会に続いて、午後4時10分より、同会場にて9月度講演会を開催し、61名の皆様にご聴講いただきました。来年6月より障害者の法定雇用率の引き上げが予定されるなかで、より積極的に障害者雇用を捉えようと、公益財団法人兵庫県人権開発協会様との共催で下記の通り講演会を実施いたしました。講演では、最初に企業における障害者雇用の現状について触れ、続いて障害者がコアな業務を担い組織の貴重な戦力となっている事例を紹介、実際に雇用を行う場合のポイントとして、本人が安心して働ける環境づくりと、企業として持続可能な雇用の実現が重要であること等解説いただきました。障害者雇用は、企業にとって多様な視点や価値観を取り入れる絶好の機会であり、組織の成長を促す戦略的な取り組みとして位置づけるべきであるとの示唆をいただきました。講演を通じて、参加者一人ひとりが障害者雇用に対する理解を深め、今後の取り組みに向けたヒントを得る貴重な機会となりました。木島講師と竹原講師 5 兵庫経協 2025年秋号

当社は1975年に創業者の平岡源丈が、姫路市の自身で経営していた喫茶店の二階を事務所として使用する形で、UCC上島珈琲株式会社様の自販機と飲料商品を販売する会社としてスタートしました。1970年の大阪万博でUCCミルクコーヒーが爆発的大ヒットしていたこともあり、喫茶店の取引先であったUCCの担当者からUCCの自販機事業展開への参加を提案され、創業を決意したそうです。日本でも徐々に自販機が普及し始めたタイミングと重なったこともあり自販機事業は順調に拡大し、1984年には現在の社屋を建設、1987年には神戸営業所を開設、 1989年には阪神配送センターを開設するなど、兵庫県南部における自販機オペレーターとしての基盤を築いていきました。また、紙コップの自販機を展開していく中でコーヒー豆の焙煎を自社で行うようになり、飲食店やオフィス、贈り物でご利用いただけるレギュラーコーヒー事業も次第に取り組みを始めていきました。 Q1. Q2. 創立50周年おめでとうございます。創業の背景や経緯を教えてください。企業として、また、経営者として、大切にされている信念や理念はございますか。会社概要代表取締役社長平岡創土当社の企業理念は「私達は『ほっとひといき』の空間を創造し、『人の心の豊かさ』に貢献します。」です。これはストレスの多い現代社会の中で、自販機やコーヒーという『ほっとひといき』落ち着ける空間を時代のニーズに合わせて提供することで、『心の豊かさ』を育んでいただくことに貢献したいという想いを込めたもので、『ほっとひといき』は創業時から使用している言葉です。経営者として大切にしていることは、従業員のみなさんが業務の中において、いろいろな経験や I n t e r v i e w 本社：姫路市大津区恵美酒町2丁目54番地資本金：10,000,000円従業員数：47名 URL：http://www.kansaicoffee.co.jp/ Lookat the企業株式会社関西コーヒー 6 兵庫経協2025年秋号

Q4. 関税や地政学的リスクなど、先読みが難しい情勢ですが、今後の展望をお聞かせください。今、日本は人口が減少する時代を迎えています。そして、減りだした人口の減少ペースは急激に回復することは難しく、10～20年先までの人口の推移は現時点で予測されているものと大きく変わることはありません。社会構造の大きな変化に対応することは大変なことですが、自販機事業はIoT を導入することでリアルタイムに売上データを把握することが出来るようになり、AIを導入することで収集したデータの分析や予測の精度も大幅に向上させることが出来るなど生産性を改善することが可能な事業です。また、人口が減少する時代でも、人が集まる場所がある限り、自販機だからこそ設置できる場所、利便性を感じていただける場所は必ず存在すると思いますし、様々な商品の販売ツールとして自販機が必要になる場面も来るように感じます。そうした時に、求められるサービスをしっかりと提供できるような体制づくりを心掛けていきたいと考えています。当社では清涼飲料水を販売する企業としてフードロスに繋がらないように、自販機の庫内在庫が過剰にならないように注意しつつ、生産性を高めるために自販機の最適訪問、最適納品を追求するよう心がけています。加えて、最近では売上の少ない自販機は商品廃棄が多くなる傾向にあることから、当社から自販機の引揚げのお願いをするという活動も行っております。また飲料容器のリサイクル事業への取り組みとして、兵庫県内の同業者のみなさんと共同出資という形でルシクラージュ株式会社も設立しており、当社の自販機にて販売している清涼飲料水の容器の大半は「ボトルtoボトル」、つまり新たな清涼飲料水の容器へとリサイクルされております。さらに昨年から、アサヒ飲料様が取り組んでいる「CO2を食べる自動販売機」の運営にアライアンス企業として当社も関わっています。「CO2を食べる自販機」は「都会の中に森を作る」をテーマに、自販機にCO2吸収材を搭載することで、稼働電力由来のCO2を最大20%吸収するというものです。また、回収したCO2吸収材もアスファルトや建材など様々な形での活用方法が検討されており、社会に放出されてしまったCO2を生活者に身近なインフラにもなっている自販機で回収・循環させ、1つ1つの小さな事業活動を環境に良いものに変えていくカーボンリサイクルを推進しています。考えることを通して成長できる「人を育てる」環境を作れているかということです。人は様々な経験をし、その都度創意工夫を行うことで技術的にも精神的にも成長していくことが出来ます。子供の頃は学校の授業や友達との遊びを通して様々な経験を積んでいくことが自然と出来ますが、大人になってからは自ら意識をしてそうした成長できる環境を周りに作っておかなければ、子供の時のような経験を積むことは簡単ではありません。当社では、それぞれの業務の中に創意工夫を盛り込める余白を残すことを意識し、一人一人が業務の中で考えることを通して成長できる環境を整えたいと考えています。また、そうした後押しが出来るような人事評価制度の構築にも取り組んでいます。 Q3. 本コーナーでは、必ずお伺いしているテーマですが、 SDG'sに関する貴社の取り組みをお聞かせ願えますか。 Lookat the 企業 7 兵庫経協2025年秋号

当法人はバス事業を運営しています。最近、バスのドライブレコーダーを点検したところ、当社に正社員として勤務するバスの運転手Xが、2000円の運賃を着服していたことが判明しました。当初Xは、着服行為を否認していましたが、証拠があることを指摘したところ、これを認めるに至りました。近時、市バスの運転手に対し、少額の運賃を着服した等の理由で、懲戒免職処分とともになされた退職手当の全額不支給処分が適法であるとの判例が出たと聞きました。そこで、当社としても、 Xを懲戒解雇処分にするとともに、退職金を全額不支給処分にしようと考えています。Xは、懲戒解雇処分は渋々納得しているものの、退職金を全額不支給にされることには不満を述べています。これらの処分に問題はありますか。 1 はじめにご質問にもご指摘のあるように、近時、地方公務員である市バスの運転手が少額の運賃を着服した等の理由で、懲戒免職処分とともになされた退職手当の全額不支給処分が適法であるとの最高裁判決が出ました（京都市バス事件／最高裁令和7年4月17日判決）。そこで、この判決を参考にして、民間の会社でも同様の処分をすることが出来るのでしょうか。 2 京都市バス事件（1）事案の概要対象となった従業員Aは、京都市の自動車運転事業のバス運転手として約29年間勤務してきました。Aは勤務中、乗客から5人分の運賃（合計1150円）の支払を受けた際、硬貨を運賃箱に入れさせた上で1000円札1枚を手で受け取り、これを売上金として処理することなく着服しました（以下「本件着服行為」といいます）。また、市交通局は、バスの車内における電子たばこの使用を禁止していたところ、Aは、乗務に際して、乗客のいない車中のバスの運転席において、合計5回電子たばこを使用しました（以下「本件喫煙類似行為」といい、上記本件着服行為と併せて「本件非違行為」といいます）。本件管理者は、Aに対し、本件非違行為を理由として懲戒免職処分をしたうえで、一般の退職手当等（1211万4214円）について全部支給制限処分をしました。Aは、これらの処分の取消しを求めて提訴しました。（2）最高裁判旨この訴えに対し、控訴審は本件懲戒免職処分を適法としたものの、退職金不支給処分は違法であるとしました。しかしながら、最高裁は、本件非違行為の重大性と事業への信頼毀損の大きさ、勤務状況を示す他の非違行為の存在、非違行為に至る経緯と発覚後の態度の不誠実さを重視し、次のように判示し、退職金不支給処分を適法であるとしました（懲戒免職処分につい弁護士瀬合孝一（弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ）着服行為に対する懲戒解雇処分と退職金全額不支給処分の適法性 Q A Q&A 労働問題 8 兵庫経協2025年秋号

ては争点となっていません）。「本件着服行為は、公務の遂行中に公金を着服したものであって、重大な非違行為である。バスの運転手は、その職務の性質上運賃の適正な取扱いが強く要請され、市交通局職員服務規程は勤務中の私金の所持を禁止している。そうすると、本件着服行為は、市の同事業の運営の適正を害するのみならず、同事業への信頼を大きく損なうものということができる。本件喫煙類似行為は、勤務状況が良好でないことを示す事情として評価されてもやむを得ないものである。本件非違行為に至った経緯に特段酌むべき事情はなく、Aは発覚後の上司との面談の際にも、当初は本件着服行為を否認しようとするなど、その態度が誠実なものであったとはいえない。」 3 京都市バス事件の分析（1）近時の公務員の非違行為に対する最高裁判決の傾向近年、地方公務員の非違行為に対し、高裁が、懲戒免職処分は適法としつつ、退職手当不支処分については裁量権の濫用として違法とした判断を、最高裁が棄却する判決が続いています。具体的には、①宮城県・県教委事件［最三小判令和5年6月27日／公立高校教諭の飲酒運転による車両衝突事故の事案（以下「宮城県判決」といいます）］や、②大津市事件［最一小判令和 6年6月27日／市職員の飲酒運転による物損事故 2件の事案（以下「大津市判決」といいます）］があります。京都市バス判決もこれらの判決の延長線上にあるものと考えられるでしょう。（2）退職金の性格の捉え方また、一般的に、退職金の性格として、勤続報償的性格・給与後払的性格・生活保障的性格があげられています。この点、宮城県判決は、一般的枠組みとして退職手当の勤続報償的性格、給与後払的性格、生活保障的性格に言及しつつ、その具体的判断ではこれらの性格への言及をせず、管理機関の裁量を尊重する結論を下しました。これに対し、大津市判決と京都市バス判決は、退職手当の額や性格等に言及することなく、不支給処分に裁量権の濫用・逸脱はないと判断しております。このように、近時の最高裁判例は、公務への支障や信頼が重視され、労働者の利益（退職手当の給与後払的性格等）が十分に考慮されない判断枠組みを採用しているものと考えられます。 4 民間部門の場合は？これに対し、上記最高裁の判決の傾向は、公務への支障や信頼が重視されていることに基づくものであることから、民間部門の労働者にそのままあてはまらないことに注意する必要があります。そこで、民間部門においては、以下の2点を慎重に検討する必要があります。 ① 非違行為（売上金の着服行為）が懲戒解雇事由に該当するか本件では問題となっていませんが、余りに少額な場合を除き、売上金の着服行為は、会社に対する重大な背信行為であり、懲戒解雇事由に該当すると考えられます。但し、本件では着服金額が2000円と少額であることから、懲戒歴の有無、反省の有無、被害弁償の有無等も考慮して、慎重に判断する必要があります。 ② 懲戒解雇事由に該当するとして、退職金全額不支給処分が適法かまた、当該着服行為が、懲戒解雇事由に該当するとしても、退職金を全額不支給処分にできるかは別の問題となります。会社としては、最低限、退職金不支給規程を定める必要があります。また、退職後に着服の事実が発覚することもよくありますので、（元）従業員の不正を理由とする退職金返還規程を定めておくことをお勧めします。なお、上記退職金の性格（給与後払的性格、生活保障的性格）に鑑みると、退職金を全額不支給とすることは認められない恐れがありますので、その点もご留意ください。以上 9 兵庫経協2025年秋号

経協レポート ●中小企業委員会 2025年度「第1回人事・教育担当者交流会」 ―SNSを活用した新卒採用戦略－【日時】2025年6月30日（月）13：30～16：30 【会場】スペースアルファ三宮大会議室【参加者】46名【目的】「ナビサイトやハローワークでは応募がこない」「採用にかけられる予算が限られている」そんな悩みを抱える中堅・中小企業の方へ、本セミナーでは、初心者でも取り組めるSNSを活用した新卒広報活動の方法についてを、実例を交えてわかりやすく解説。SNSは広告費をかけずに情報発信ができ、従来の採用活動と比べて最大80％のコスト削減も可能と言われている。とはいえ、「何を発信すればいいのか分からない」「炎上リスクが不安」といった理由で、活用をためらっている企業も少なくない。今回の交流会では、兵庫県の製造業・建設業の成功事例をもとに、応募につながる発信内容や、定着にもつながる求職者とのコミュニケーションの工夫をご紹介。採用活動に活かせるネタや投稿例、学生とのやりとりのポイントなど、すぐに実践できるノウハウを提供。また、中堅・中小企業の人事担当者の皆様の研鑽と交流の場として、参加者同士の意見交換の時間も設けました。同じ立場の参加者同士で、現場での悩みや工夫を共有しながら、新卒採用やSNS運用のヒントを得られる貴重な機会とし、「コストをかけずに、採用の成果を上げたい」そんな企業の皆さまのご要望にお応えする形でテーマで実施しました。 ●総務委員会「経営改善視察研究会」の実施結果について去る、7月11日（金）から12日（土）にかけて、参加者11名で北海道苫小牧市にあるCCS調査株式会社様を訪問し、二酸化炭素の回収・貯留技術に関する施設見学および技術説明を受けました。同社の取り組みは、地球温暖化対策として注目されており、産業界における環境対応の一環として非常に有意義な内容でした。また、2日目は、ゴルフ（サンパーク札幌ゴルフコース）で、業種を超えた親睦を深める貴重な機会となりました。参加者同士の交流が活発に行われ、今後の総務委員会の活動にも良い影響が期待されます。第1回人事・教育担当者交流会講演・グループ全体でのディスカッション風景令和7年7月11日（金） CCS調査株式会社様実証試験センター事務所屋上にて 10 兵庫経協2025年秋号

KEIKYO REPORT ●税経委員会〈第60回税経セミナー（9回講座）を開催〉会場：神戸市産業振興センター（全9回の内 8回開催参加者合計155名）・第1回「企業経理の基礎知識」 7月29日（火）講師：関西学院大学名誉教授博士（商学）梶浦昭友氏・第2回「法人税の基礎（パートⅠ）」 8月4日（月）講師：公認会計士・税理士村上純二氏・第3回「法人税の基礎（パートⅡ）」 8月21日（木）講師：公認会計士・税理士村上純二氏・第4回「原価計算」 8月27日（水）講師：公認会計士・税理士玉置求己氏・第5回「固定資産をめぐる会計・税務計算の基礎」 9月3日（水）講師：公認会計士・税理士玉置求己氏・第6回「キャッシュフロー計算書」 9月5日（金）※ 講師：公認会計士・税理士今岡重貴氏・第7回「税効果会計」 9月9日（火）講師：公認会計士・税理士松井知章氏・第8回「連結会計」 9月12日（金）講師：公認会計士・税理士今岡重貴氏・第9回「管理会計の基礎」 9月17日（水）講師：公認会計士・税理士松井知章氏 ※：第6回は台風接近の為、10月8日に延期しております〈経理懇話会〉第244回例会 2025年9月29日（月）参加者28名「会計伝票のペーパーレス化及び業務改善について」山陽特殊製鋼株式会社より発表・問題提起、後全員にて討議、検討 ●人材育成委員会「監督者研修会」「職場リーダー研修会」当協会では、主に製造現場の監督者等の職場リーダーを対象に、メンバーと共に問題の発見・解決をしながら部会育成と職場の活性化をリードする監督者等の育成を目指して、大手企業で構成される「監督者研修会」と中小企業で構成される「職場リーダー研修会」を開催しています。【監督者研修会】 7月例会〈神戸市産業振興センター会議室901〉日時：7月8日（火）9：00～17：00 出席者：55名内容：テーマ「監督者のためのファシリテーション」に係る講義・ワークショップ講師：㈲マイパーソネル代表橋口美幸氏 8月例会〈神戸市産業振興センター会議室901〉日時：8月19日（火）9：00～17：00 出席者：55名内容：テーマ「コミュニケーション」に係る講義・ワークショップ講師：㈲マイパーソネル代表橋口美幸氏 9月例会〈神戸市産業振興センター会議室901〉日時：9月16日（火）9：00～17：00 出席者：54名内容：テーマ「リーダーシップ」に係る講義・ワークショップ講師：㈲マイパーソネル代表橋口美幸氏 11 兵庫経協2025年秋号

経協レポート【職場リーダー研修会】 7月例会〈ひょうご共済会館 5階「ツツジ」〉日時：7月11日（金）9：00～17：00 出席者：32名内容：テーマ「監督者のためのファシリテーション」に係る講義・ワークショップ講師：㈲マイパーソネル代表橋口美幸氏 8月例会〈ひょうご共済会館 5階「ツツジ」〉日時：8月22日（金）9：00～17：00 出席者：31名内容：テーマ「コミュニケーション」に係る講義・ワークショップ講師：㈲マイパーソネル代表橋口美幸氏 9月例会〈ひょうご共済会館 5階「ツツジ」〉日時：9月19日（金）9：00～17：00 出席者：29名内容：テーマ「リーダーシップ」に係る講義・ワークショップ講師：㈲マイパーソネル代表橋口美幸氏異業種間合同研修（公財）21世紀職業財団と共催で、人事・ダイバーシティ推進責任者・研修企画担当者を対象としたオンラインセミナーを開催いたしました。日時：7月24日（木）13：30～15：00（オンライン）受講者：21名内容：テーマ「ジェネレーション・ダイバーシティ推進セミナー」講師：（公財）21世紀職業財団客員講師松好登紀子氏 ●VAL21 VAL21は、ダイバーシティ＆インクルージョンの実現の一環として「女性活躍推進」を位置づけ、県内企業の活性化、働く女性の意識・地位向上、つながる場の提供を目的に活動しています。出張講座「神戸学院大学男女共同参画フォーラム」神戸学院大学主催の「男女共同参画フォーラム」に、VAL21の会員4名が講師として登壇し、VAL21の組織や活動を紹介するとともに、所属企業・団体のダイバーシティの取組みや自身のキャリア、職場での働き方や仕事に対する意識について話しました。イベントの詳細は下記の通りです。日時：6月24日（火）11：15～12：45 ※録画したものを後日オンデマンド配信場所：神戸学院大学ポートアイランド第1キャンパス B105 テーマ：「多様性と共に成長する～経験から学ぶこれからの働き方のヒント～」対象者：神戸学院大学学生・教員、その他視聴申込者計約120名登壇企業：団体：（福）神戸婦人同情会、（福）神港園、㈱デンソーテン、兵庫県職場リーダー研修会9月例会寸劇「桃太郎がリーダシップを発揮したら」神戸学院大学「男女共同参画フォーラム」より座談会の様子 12 兵庫経協2025年秋号

KEIKYO REPORT ●青年部会 7月度例会日時：7月9日（水）参加者：15名内容：大阪・関西万博の開催に伴い、最新の展示内容や各国パビリオンの取り組み、スマート技術の導入状況、地域経済への波及効果などを把握することを目的に視察を実施しました。未来社会に向けた指針を改めて得ることができた、有意義な視察となりました。なお、楽しみにしていた「アオと夜の虹のパレード」が中止となり、非常に残念な気持ちです。 8月度例会日時：8月6日（水）参加者：14名とご家族様内容：本年も早駒運輸株式会社様のご協力のもと、「家族例会海上クルージング」を開催いたしました。クルージング船「boh boh KOBE」を貸し切り、夕刻の神戸港を巡るクルージングを楽しみながら、食事会やビンゴ大会を実施いたしました。参加された皆様にとって、子どもたちの笑顔が次の活力となる、心温まる素敵な例会となりました。 9月度例会日時：9月10日（水）参加者：14名内容：地元の先進的企業である株式会社フェリシモ本社を訪問し、「ともにしあわせになるしあわせ」という理念について学びました。社員一人ひとりがこの理念を主体的に受け止め、日々の業務に深く浸透させていることを理解することができました。当日は、株式会社フェリシモ文化事業推進部部長・能勢加奈子氏による講演「フェリシモチョコレートミュージアムの共創マネジメント」が行われ、共創の考え方や実践について貴重なお話を伺いました。講演後は、フェリシモチョコレートミュージアムを見学し、さらに特別に直営ワイナリー「f winery」にて懇親会を開催。フェリシモの価値観や取り組みを五感で体験できる、非常に充実した例会となりました。 13 兵庫経協2025年秋号

6月27日（金）に、兵庫労働局、兵庫県、兵庫県教育委員会から当協会に対して、新規高等学校・特別支援学校卒業予定者の雇用確保についての要請を受けました。新規高等学校等の新卒予定者の内定率は例年並みの水準を維持してはいるものの、社会経済活動の影響は計り知れず、就職環境については引き続き不透明な状況が懸念されることから、来春の求人拡大も含め、雇用機会の確保に向けた協力要請を受けました。当日は、厚生労働省兵庫労働局日髙職業安定部長、兵庫県産業労働部常陰課長、兵庫県教育委員会藤原教育長から成松会長に要請文が手渡され、成松会長より当協会として積極的に協力する旨を返答いたしました。また、新卒予定者の雇用の現状、今後の労働情勢や職業教育について意見交換を行いました。なお、要請文については当会ホームページに掲示しておりますので、会員の皆様には趣旨ご理解のうえ、引き続きご対応並びにご協力をよろしくお願い申し上げます。 9月の「障害者雇用支援月間」に合わせて、9月2日（火）に、金成兵庫労働局長、小林兵庫県産業労働部長、藤原教育長から当協会に対して障害のある方が一人でも多く就業出来るよう、雇用確保についての要請を受けました。成松会長からは「現状の県内の障害者雇用率を真摯に受け止め、会員企業への周知・啓発を更に行っていきたい」と応じました。当協会では、9月19日（金）に開催する当協会会員企業向け講演会では「中小企業の成長戦略としての障害者雇用（義務的雇用から戦略的雇用へ）」という題目で実施予定としており、これまで、障害者雇用は「法の縛りがあるから」「企業の社会的責任」という側面で考えるという傾向であったが、現下の人材不足の状況から、人材確保という視点を踏まえ、積極的な検討を進めるという内容での講演を開催します。また11月11日（火）神戸国際展示場で行う『ひょうご障害者ワークフォーラム2025」では企業と障害者の方との交流を図る催事を開催します。なお、要請文については当会ホームページに掲示しておりますので、会員の皆様には趣旨ご理解のうえ、引き続きご対応並びにご協力をよろしくお願い申し上げます。新規高等学校・特別支援学校卒業予定者の雇用確保について要請を受けました障害者雇用の拡大及び特別支援学校卒業生の雇用確保について藤原教育長から要望書を受け取る成松会長金成兵庫労働局長から要望書を受け取る成松会長 14 兵庫経協2025年秋号

共同開催セミナー兵庫経協/連合兵庫/兵庫県社労士会予告『確認しよう! 外国人雇用のポイント』［内容］［参加者］［定員］ ①「人権デュー・ディリジェンスについて」ILO駐日事務所／鴨下真美 ②「外国人が働く現場から」㈱トリドールホールディングス（丸亀製麺） ③「外国人雇用のポイント」キャリアバンク㈱／取締役社会保険労務士水田充彦 ④「ひょうご外国人雇用企業認定制度について」兵庫県兵庫経協会員、連合兵庫構成組織、兵庫県社労士会会員その他、県下企業経営者など会場90名／Web配信は参加上限なし詳細は後日、兵庫経協のホームページ等でご案内いたします。［日時］2026年1月30日金（14時00分～17時00分）［場所］兵庫県中央労働センター小ホール／Webでも同時配信いたします。〒650-0022 神戸市中央区元町通6-1-8 東栄ビル1階 TEL 078-366-4252 FAX 078-366-1080 兵庫事務所 15 兵庫経協2025年秋号

【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 食事の時、よく噛んでいますか？食べることは生きるために栄養を取り込むだけでなく、精神面においても重要な役割をもっています。いつまでも口から食べられるようお口の管理をしっかりと行いたいものです。 1．よく噛む事が老化を防ぐ。歯がある人は、歯がない人より血液中のビタミン濃度高い事が分っています。歯が丈夫だと、食物繊維やビタミン豊富な野菜や果物の摂取が多くなり生活習慣病の予防に効果的でお肌にも良いです。ビタミンがよく吸収する事は、老化を防ぐことになります。 2．よく噛めると健康を維持できる。噛める人と噛みにくい人では、食品の摂取などにも大きく作用されます。噛める人の場合ではバランスのとれた食事を摂ることが出来ますが、噛みにくい人の場合では肉類や豆類・乳製品等が少なくなり、菓子類等の糖分が多くなる傾向があります。しっかりと噛める歯や補綴物・入れ歯等でバランスの取れた食生活を送りたいものです。 3．よく噛むと脳もスッキリ。噛むことで脳の血流が多くなります。よく噛んで食べると唾液の分泌が促進される他に、脳の血流が増加し、脳が活性化されます。すなわち、肥満の防止、記憶力を高める効果が期待されます。動物の中で、唯一食事を味わうことが出来るのは人間だけです。味わって食べるということは、生きてゆくための水分補給や栄養摂取だけではありません。おいしく食べると満足感が得られて、ストレスの解消にもつながります。また、誰かと楽しく食べることはコミュニケーションが多くなり、舌で味わったり、匂いを嗅いだり、目で見たりなどの刺激を与えることにより脳を活発になって心が安定する効果が期待されます。 4．よく噛む事で認知症予防。脳は加齢とともに衰えていきますが、よく噛む事で脳への血流が増加して記憶・判断・意志などに関与する神経細胞が鍛えられて認知症の予防につながります。（ガムを2分間噛んでいると、脳に血流が増加して活性化してきます。） 5．運動能力と密接な関わりを持つ歯一流のスポーツ選手に求められる色々な事柄の中に、瞬発力と集中力があります。この力を最大限に発揮するには、良い噛み合わせで瞬間的にグッと歯を食いしばることが必要です。大きなむし歯がある、抜けたままの歯があると、十分な力を出せないことがあります。噛み合わせがしっかりしていると、運動能力が高まります。中学生を対象とした調査によると、奥歯の噛み合わせがしっかりしている生徒は、そうでない生徒に比較して瞬発力・跳躍力・筋力とも 15～20％高いという結果が出ています。これらのことから、歯の役割の重要性が改めて理解して頂けたと思います。最後に、かかりつけ歯科医は「歯の健康」サポーターです。上手に活用して下さい。痛みが無くても、年に3～4回は定期的に歯科医院を受診してむし歯・歯周病健診等を診てもらい PMTC（プロフェショナル・メカニカル・トウース・クリーニング）という専門的な歯のクリーニングを受けましょう。（自分では取り除く事が難しい歯周ポケットの歯垢や歯石などを除去したり、歯垢をつきにくくするために歯の表面を滑らかにしたりします。）皆様が、一生涯楽しく食事をして元気で活動的に生活されることを願っております。兵庫県歯科医師会地域保健員会委員豊後孝敏よく噛む事が健口（けんこう）の秘訣 ※参考文献：「からだの健康は歯と歯ぐきから」「歯とお口からはじめるアンチエイジング」公益財団法人8020推進財団 16 兵庫経協2025年秋号

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