4 労働契約の内容になっているじゃないか しかし,インテリム事件の控訴審(東京高等裁 判所令和4年6月29日判決)は,「本件労働契約に係 る年俸制の合意の内容は,職務給と同様に,みな し手当もその一部に含めるものであったというの であり,そうである以上,このようなみなし手当 を減額できるのは,職務給の減額の場合と同様, 会社に最終的な年俸額決定権限を付与した本件賃 金規程の定めに基づいて初めて可能であったもの というべく,時間外労働等において自由に減額す ることはできない性質のものというべきである」 と判示し,第1審を覆しています。 何故,控訴審は第1審判決を覆したのでしょう か。それは,この事件におけるみなし残業代が労 働契約の内容となっている制度である以上,会社 による裁量的変更は許されないとするもので,こ の結論自体,至極当然のものと言う他ありません。 5 会社サイドの対応としては 上記のような判例状況から,時間外労働<みな し残業時間となっている会社サイドとしては,み なし残業代の一方的な廃止や減額は認められない と考えて,労働契約法8条及び第10条の定めから, 実務上,みなし残業制度の減額(廃止)の必要性 を説明し,可能な限り経過措置や代替措置を設け るなどしたうえで,個別合意の取り付け或いは就 業規則の変更によって,初めてみなし残業手当 の減額(廃止)をすることができると考えておく べきでしょう(特定層のみ不利益変更するについ て,みちのく銀行事件参照)。 具体的経過措置や代替措置については,数年を 掛けての段階的な引き下げ(経過措置)や,他の 賃金制度を見直して減額分の調整を行う(代替措 置)が考えられるのではないでしょうか。 最後に,就業規則による場合は,その変更手続 もお忘れなくお願いします。 以上 ※労働基準法第37条 「使用者が,第三十三条又は前条第一項の規 定により労働時間を延長し,又は休日に労働さ せた場合においては,その時間又はその日の労 働については,通常の労働時間又は労働日の賃 金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内で それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割 増賃金を支払わなければならない。」(以下省略) ※労働契約法第8条 「労働者及び使用者は,その合意により,労働 契約の内容である労働条件を変更することがで きる。」 ※労働契約法第10条 「使用者が就業規則の変更により労働条件を 変更する場合において,変更後の就業規則を労 働者に周知させ,かつ,就業規則の変更が,労 働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の 必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労 働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変 更に係る事情に照らして合理的なものであると きは,労働契約の内容である労働条件は,当該 変更後の就業規則に定めるところによるものと する。」(以下省略) 以上 兵庫県経営者協会には経営側の視点で活動する「兵庫県経営法曹会」の メンバーが多数在籍しています。そんな弁護士陣に日頃のお悩みを相談 しませんか? 企業経営に関わることであれば、どんなことでも結構です。安心して相談 できる弁護士をご紹介しますので、是非、ご活用ください。 当協会ホームページのインフォメーションにある右の画像をクリックしてください。⇒ https://www.hpea.jp 兵庫県経営者協会 初回無料 (60分程度) 15 兵庫経協2025年夏号
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