現在の地で開業して昨年で20年を迎えました。 いわゆる一般歯科、地域の皆さんのホームドク ターとして仕事をしていますが、患者さんに常々 言っているのは「定期的に歯科健診を受けましょ う」という事です。 私の歯科医院では定期健診に来られる患者さん のお口の中の状態を正確に記録していくことに注 意を払っています。ただ診ているだけでなく、小 さな変化を見落とさないためです。そのために、 患者さんのお口の中の写真を良く撮ります。基本 的にはおひとりの口の中で9枚、定期健診を続け ておられる方は2年に1度9枚、それに加えて大き な変化があった場合は追加で、と写真を撮り続け ていたら、枚数は膨大なものになりました。10万 枚はかなり昔に超えています。レントゲン写真も デンタルレントゲンといって一度で数本の歯を撮 影する小さなフィルムの写真を撮ります。おひと りの口の中で10枚、撮られる方も大変ですが、小 さなむし歯や歯周病による骨のわずかな変化を見 逃さないためです。デンタルレントゲン写真の解 像度は医科のものに比べはるかに高いので、詳細 に観察できます。 こういった事を続けていると、初診から10年以 上定期的にお付き合いしてきた患者さんが増えて きました。歯科、特に私の専門の歯周病治療では SPT(歯周病安定期治療)やP重防(歯周病重症化 予防処置)といって保険治療で歯周病の進行を予 防する処置が可能です。本来、日本の医療保険制 度のもとでは、提供される医療サービスは診断と 治療に限定されており、予防やサポートはほとん ど認められていませんでした。今でこそ「予防歯 科」という言葉が一般的になってきましたが、従 来は歯科の予防処置に関して健康保険を使ってよ いのかはグレーゾーンであったのです。しかし、 むし歯も歯周病も生活習慣病の要素が大変大きい 病気ですので、以前から治療後の再発防止やメイ ンテナンス、定期健診に関して歯科は医科よりは るかに進んでいました。私の感覚では医療保険制 度がやっと追いついてきたと感じています。 さて世界に目を向けますと、歯科の定期健診は ある意味「文化」だと思います。欧米では歯科医 院に定期的に通う事は常識となっており、白いキ レイな歯と笑顔は大変に重要視されます。これは 医療保険制度の違いによるところもありますが、 自分で歯のケアをして歯科医院に定期的に通うこ とが文化として定着しているように感じます。や や古いデータですが、2014年にライオンが発表し た調査結果では、自分自身のオーラルケアに対し て自信があるかとの問いに、アメリカとスウェー デンでは約8割の人が「自信あり」と回答したのに 対し、日本では6割以上が「自信なし」だったとの こと。また、アメリカ人の4割以上が歯科医を「好 きな人」と回答し、歯科医を「苦手な人」と回答し た人はアメリカ・スウェーデン共に4%未満とご く少数派であるのに対し、日本で14%存在したと のことです。私の感覚では日本人では苦手意識を もっておられる方がもっといるように感じます。 グローバル化が進んだ今現在です。20年地域の ホームドクターとしてきた私にとって、特にハイ リスクな方に対しての一番大事な歯科治療は定期 健診に他ならないという結論です。皆さんもぜ ひ、かかりつけ歯科医院を持ちましょう。 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 兵庫県歯科医師会 地域保健委員会委員 宮本 学 定期的に歯科健診をうけましょう 16 兵庫経協2025年春号
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